2016年6月30日木曜日

一義的な問題


地湧社が創立以来出してきた月刊誌「湧」の1986年発行の第1号から、巻頭言を土日を除く毎日1編ずつ掲載していきます。

(月刊「湧」1993年2月号)

一義的な問題


 松枯れは相変わらず進んでいる。ひと頃、松枯れの原因は松喰い虫の発生によるものだとし
て殺虫剤の空中散布が盛んに行われ、周辺住民が直接関接被害を受け問題になった。しかし、
松枯れの原因はもっと深いところにあって、松喰い虫を駆除しても松枯れはとまらなかった。
松喰い虫は枯れはじめた松の後始末屋にすぎず、幹の導管の中に潜入した線虫によって松が既
に侵されていることがわかった。ところがそれも二次的な事柄で、線虫自体の発生の原因は土
壌菌のアンバランスからきているという。土壌と根の健全な松は線虫にも松喰い虫にもやられ
ない。殺虫剤の空中散布には多額の費用がかかる。効果がないとわかっていても続けているの
は、経済的利益を得る人がいるからに他ならない。
 さて、なぜこのような話を持ち出したかというと、今の社会はこの松枯れ対策と同じように、
二義的、三義的な問題に人々の関心や経済活動が集まってしまっているということを言いたか
ったわけである。譬えてみれば、松喰い虫は日本の将来を脅かすかも知れない世界状勢であり、
線虫は腐敗政治体質と経済構造体質である。土壌菌のバランスがいいか悪いかは我々一人ひと
りの資質である。これを見失うと、いつの間にか豊かさも平和も失ってしまう。
 政治家や専門家は最重要な問題を扱っているようにみえるが、たいていの場合、実は目先の
利を伴う二義的三義的問題を扱っているにすぎない。一義的な問題は常に素人庶民の手中にあ
る。これが整っていけば二、三義的問題はおのずから間違わない方向に進むだろう。(MM)
                         1993年2月10日発行

(次世代のつぶやき)
政治的なことでいえば、ようやくすべての人に一義的な問題を政治に関与することができる時代に来ました。一票の差問題があるとはいえ、平等に持つ選挙権です。これこそ資質が問われます。
7月10日まで期間限定で、ブックレット『誰にための憲法改「正」?』(馬場利子著)を無償ダウンロードできるようにします。くわしくはこちら。(2016年6月30日 増田圭一郎 記)