2016年1月21日木曜日

権威


地湧社が創立以来出してきた月刊誌「湧」の1986年発行の第1号から、巻頭言を土日を除く毎日1編ずつ掲載していきます。

(月刊「湧」1987年4月号)

権威


 大阪の加藤清さんという人は常識はずれな人である。権威におもねることにも、逆らうことにもまったく頓着なく、権威というものに無関係にものごとを判断していく人である。私が、加藤さんの人と仕事のやり方に関心をもちはじめてから八年になるが、この間にも私は彼の普通の人とは違う並でない言行の数々を見てきた。
 加藤さんは天王寺区に健康再生会館という道場を主宰し、医師に見放されたり、現代医療を見限ったりしてやってくる末期ガンの人達と一緒に、懸命に生への再起を試みている。彼は一貫してガンは死の病ではないと唱えて、その独自の生命観によって治療を行っている。
 といっても、その治療法は特別奇異なものではない。体の歪みをなくし、全身の血行をよくすること、そして断食と速やかに血液の再生ができるように効率よくとり入れられる食物として、粉ミルク、鶏卵、塩類飲料などを与えることくらいである。この道場には常時五十人から百人近い人達が、再起をかけて療養生活のしかたを勉強しているが、この中のおおかたの人達は二週間の研修期間で元気をとり戻して社会復帰しているのである。
 加藤さんがこのように効果的な治療を発見した最も大きな要素の一つは、あらゆる権威というものから徹底的に自由であることにあると思う。彼は患者との関わりのなかで現代医学の権威、自然主義医療の権威などいろんな権威や反権威におかまいなく、ただ患者の心身との呼応の中からじかに生命を引き出すのである。
 権威という幻影に固められている現代の我々の生き方を問い直す一冊ができる。新刊、加藤清著『ガン革命』である。 (MM)
                               1987年4月10日発行

(次世代のつぶやき)
“あらゆる権威から徹底的に自由であること”は、いつの世でもたやすいことではないでしょう。
そういう生き方をしている人は、どんなことについてしゃべってもブレがない。そして、一緒にいるだけで、なぜか自然と癒やされます。地湧社の著者の方にはそういう方がたくさんいらっしゃいます。
(2016年1月21日 増田圭一郎 記)