2016年4月27日水曜日

第二の開国


地湧社が創立以来出してきた月刊誌「湧」の1986年発行の第1号から、巻頭言を土日を除く毎日1編ずつ掲載していきます。

(月刊「湧」1991年1月号)

第二の開国


 二十一世紀の幕開きがいよいよ秒読みに入った。これからの十年は、過去の歴史の経験から
は類推することのできないような状況が次々に生じるだろう。
 最近、親しい中国の知人に会った。七十才近い彼は日本の大学を卒業した知日家である。空
港まで送ってくれた車中で彼はこんなことを言い出した。「私は大和魂をよく知っている。勤勉
で礼儀正しくガッツがあって、それが今日の日本の繁栄をもたらした。しかし、中国人が世界
を知って活動をはじめたなら、三十年後には日本を抜いて、もつと大きな繁栄社会を築くだろ
う。中国には十二億人のパワーがある。規模は桁ちがいだ」と。そこで私も思わず言ってしま
った。「そうかもしれない。しかし、その頃には日本人なんて一人もいませんよ。日本は出てい
く人と入ってくる人とが多過ぎて国境なんて引いていられません。そこには地球人がいるだけ
ですよ。中国は勝手に繁栄してればいい」。彼はびっくりしたような顔で一言、「ふうーん、あ
なたは面白いことを言う」と言ったきりしばらく黙ってしまった。この大ボラの吹き合い以後、
われわれ二人は更に親しさを増したように感じられた。
 ヨーロッパは経済にはじまって政治さえも統合をはじめている。今まで鎖国状態にあった共
産圏の国々も次第に体制をほどきはじめ、ソ連東部の学校では第一外国語を日本語にするとい
う。近隣の数億もの民をもつ国の人々が、この小さな島国に押し寄せてくる。いま日本は第二
の開国を迫られている。(MM)
                         1991年1月10日発行

(次世代のつぶやき)
中国はこの30年で、経済的には日本を大きく超えました。ただし、繁栄しているといえるでしょうか。
そして、日本は、第二の開国をしているでしょうか。確かにアジアの他国からの入国は増え続けていますが、開国はまだまだです。
(2016年4月26日 増田圭一郎 記)