2014年1月21日火曜日

【新刊のご案内】『葦かびの萌えいずるごとく 若き日の自己発見』(和田重正著)

2/1発売予定で、『葦かびの萌えいずるごとく 若き日の自己発見』(和田重正著)が刊行されます。










四六判 288ページ 1575円(税込)
ISBN978-4-88503-229-5


 本書は40年以上前に、柏樹社から出版された同タイトルの復刻・再版本です。著者の和田重正さんは、明治40年、鎌倉生まれ。東京帝大卒業。17歳の頃から深く人生に悩みはじめ、生きる意味とは何か、はげしく苦悶します。そして、28歳の春、死を寸前にして不思議な奇縁に恵まれ、人生の大意を知ります。以後、小田原で私塾「はじめ塾」をひらき、教育者として、また若い人たちの人生の友として活動されました。本書は、この「はじめ塾」で著者が中学生や高校生に語った「人生にとって大切なこと」をまとめたものです。読むと心がほっとし、自分をしばらない生き方ができるようになります。
 今回、著者の和田重正さんのご子息で「はじめ塾」前塾長でもある和田重宏さんから、本書刊行によせてお言葉をいただきました。以下に全文掲載いたします。

 
==和田重宏・はじめ塾前塾長「新版刊行によせて」==

 長いこと待ち望んでいた父、和田重正の「葦かびの萌えいずるごとく」が復刻、再版されることになりました。この本は、昭和30年代のはじめ塾で当時の塾生たちに「日曜の話」で語った話で構成されています。今回復刻されるということで、私もじっくりと読み直しましたが、五十年以上前に話したことなのに、色あせることなく、古さをまったく感じませんでした。しかも現在、私たちが抱えている諸問題に対する解決への核心的な答えをも提示しています。
50年前とは比較にならないくらい技術やシステムが進んだ世の中になったというのに、なぜ古さを感じないのか。そして50年先を見越すことができた洞察力は一体どこから出てきたのか。その謎解きをしようとすると、本書の随所に出てくる「いのち」という言葉が浮かびあがってきます。父は、この「いのち」は「生物学的な生命」とは違うと言っています。つまり父は、目に見えない説明のできない全体性を捉える元を「いのち」と呼んだのではないかと思われます。
 父がテレビの取材を受けた時に、肩書や名刺を持たなかったために、「市井の教育者」などという肩書を勝手につけられたことがあります。その時に父が「教育だけをしているのではないんだがなあ」と独り呟いていたことを覚えています。それは、専門がもてはやされ、その分野だけの研究に没頭し、その結果専門細分化が進み、横のつながりを失い、どの方向に向かっているのかを見失ってしまった社会に対する揶揄としての独り言でした。専門を否定しているのではありません。専門分野にだけ捉われるのではなく、常に全体を見て、人類が進むべき方向を確認しながらでなくてはならないと言いたかったのでしょう。専門を持たないというのは、裏を返せば全体を捉える専門家とも言えるわけです。その全体の関係性を明らかにするのに必要だったのが「いのち」という言葉だったようです。
 「いのち」の観点に立って世の中の動きを見ていたから、進むべき方向を見失った社会がどうなるかは容易に予見でき、現象に目を奪われることなく、そのものの核心をついた洞察ができたのです。時代が変わろうと「いのち」は変わりません。その答えは一つもぶれることなく、この行き詰まりを呈している時代には、より一層の輝きを増していると感じられたのです。
 「いのち」については、「葦かびの萌えいずるごとく」の十年後に出版した「もう一つの人間観」に詳しく書いています。今、次代を担っていかなければならない子どもや若者たちを取り巻くいじめ、不登校、勉強などの日常的な諸問題をはじめとし、人の働き方、自然環境の急激な変化、原発、企業・情報・金融のグローバル化など、すべての分野で一気に壁にぶつかっています。このような状況にあって、総合診療、有機・自然農法と言った「いのち」の側に立って取り組もうとする芽生えもある中、この本の復刻は意義あることで、今方向を見失い、明日の社会や自分がどうなるのかという漠然とした不安を抱きながら暮らしている多くの人々にとっての羅針盤となり得るでしょう。そしてまた、この本によって安心を得た大人たちが未来を生きる子どもたちを幸せへと導くことになると私は信じています。

        平成25年10月4日
      和田重正の終の棲家だった宏南庵にて


                                                                  和田重宏

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(編集部)