2019年1月7日月曜日

塩と食塩


しばらく更新が滞ってしまいましたが、再開します。

地湧社が創立以来出してきた月刊誌「湧」の1986年発行の第1号から、不定期ですが月2本くらいずつずつ掲載していきます。

(月刊「湧」1993年12月号)

塩と食塩

 九十年間続けてきた塩の専売制度が近く廃止になるという。
 四十年程前、専売公社が食卓塩と称して、純度の高い塩化ナトリウムのさらさらした結晶を
売り出し、外気にさらしても湿気ない塩として珍重された。その頃、私は化学の演習で海水塩
の成分分析と精製の実験をやったことがある。塩田の天日乾燥と煮詰濃縮によってとれた粗塩
は、塩化ナトリウム以外にマグネシウムなど多種類のミネラル(金属)成分が含まれている。
しかし家庭用の塩は塩化ナトリウム以外の成分を不純物としてことごとく排斥し、台所には純
白の塩が増えていく。化学的処理による製塩は、やがて電気分解とイオン交換膜法製塩の登場
となり純度は一層高まった。ここで完全に塩田製法は姿を消すことになる。
 当時、この純度を高める製塩法に疑問をもつ人々がいた。海水塩は生物にとって必要な成分
を含んでおり、それを絶ってしまうと健康になんらかな影響がでるのではないかと危惧した人
達である。この人達は政府その他の関係機関に意見具申をしたが無視されてきた。
 ところが最近になって、分析技術の向上と医学の発達により、微量ミネラルや測定が難しい
痕跡元素の欠如によって、数々の難病奇病が起こるということがわかってきた。海水中にある
数十種類のミネラル元素が、一つ、またIつと、次第に生命活動に重要な関わりがあることが
明らかにされてきている。
 化学用語では塩化ナトリウムを食塩と呼ぶ。私達は塩を食べているのではなく、食塩を食べ
させられてきたというわけだ。(MM)
                         1993年12月10日発行

(次世代のつぶやき)
最近金属アレルギーの問題がよくクローズアップされます。ほとんどは、皮膚に出る直接的なアレルギーですが、なかには歯の詰め物からきたり、食品添加物に入っている金属からの体内アレルギーも指摘されています。実は、これは50年近く続いた、食塩の時代の影響もあるのではないでしょうか。人間や植物にとって必要なミネラルは多くても少なくてもいけない。過剰摂取によるアレルギーは、その前に欠乏状態が関係していると思うのは邪推でしょうか。(2019年1月7日 増田圭一郎 記)